母という病
私の人生を変えた一冊を選ぶとしたら、この本になると思う。
一人目の子どもを授かり、身動きが取りにくくなる前にと帰省した際。
空港の本屋さんで、この本を見つけた。
タイトルに惹かれたのは、きっと心のどこかで問題の本質に気付いていたからだと思う。
この本を読んでから、私の「解毒」のすべては始まった。
母と子の関係。それは対等ではない。
世話をされる。衣食住を保証してもらう。生物としてそれらがないと生きていけないのはもちろんのことだが、一番大切なのは「愛着」だ。
自分を生んでくれた人に、自分を肯定してもらえる。
温かなまなざしを感じ、自分の行動に注目してもらえる。
褒められ、認められ、そうすることで子どもの心は育つ。
そういう経験を経てやっと、外の人間とも勇気を出して関わっていくことができる。
外の世界(幼稚園、学校など)で悲しいことがあったとき、味方になってもらえる。
どんなことがあっても、自分を愛してくれる人がいるという体験は、外で悲しいことがあったときに跳ね返す力になり「自分の人生を歩んでいく」ための、心の中の武器になる。
しかし、母親との関係に問題があった場合。つまり「母という病」を患っている場合。
様々な問題を抱え、それは長期化する。
良い子、になろうとし続けても。
悪い子、になろうとし続けても。
それは結局自分の人生ではなく「母のため」に生き続けることになり、心に空虚感を持ち続ける。
著者である岡田尊司先生は、本書の中で以下のように述べている。
「過酷な子ども時代を過ごした人にとって、母という病を乗り越えることは、母親を求めることを諦め、そのことを納得するプロセスでもある」
「死にたい気持ちを克服するということは、親がかけた呪いを打ち破るということにほかならない」
生きづらさを抱えてきた人にとって、母という病はとても大きく、とてもかなわないように見えるかもしれない。しかし、問題を解きほぐし、叶わない部分は自分の中で諦め、受け入れていくことで、母という病を克服することは可能なのだ。
岡田先生は、病気や問題も、母という病を克服するきっかけを得るための自己修復の試みだとも述べている。
病気や問題という形で表面化に出てきた母という病。それは、きっと傷ついた自分の心を癒して、本当の意味で修復させていくためのプロセスなのだと思う。
幼少期にかけられた「呪い」を打ち破れた時、人は必ず自分らしく生きていくことができる。
岡田先生のこの本は、そんな希望と、一歩踏み出す勇気を与えてくれる。
読みながらカウンセリングをされているような、そんな一冊です。
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